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編集委員会からのお知らせ:2021年10月号海外文献紹介

Fasting drives the metabolic, molecular and geroprotective effects of a calorie-restricted diet in mice.

Heidi H. Pak, et al.
Nature Metabolism. 3: 1327-1341 (2021).

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34663973/

 老化に対して抑制的に働く最も効果的な介入方法としてカロリー制限が広く知られており、過去数十年にわたって多くの科学者によってカロリー制限の効果が明らかにされてきた。これまでカロリー制限は、多様な生物の寿命と健康寿命を延ばし、多くの加齢に伴う病気を予防もしくは遅らせることが示唆されてきた。マウスにおいては、カロリー制限は糖代謝制御を改善し、寿命も延伸することが報告されてきた。そのような背景から、カロリー制限の生理学的・分子生物学的メカニズムを明らかにし、さらにカロリー制限が持つ抗老化作用を増強せる方法に大きな関心が寄せられている。
 本論文では、カロリー制限に加え食事頻度を調節することで、カロリー制限の効果に影響を与えることが示唆された。特に加齢マウスにおいて、顕著な効果が観察された。実験では、通常餌を自由摂取させたマウスに対して、摂取カロリーを制限したマウスでは耐糖能の改善が見られた。興味深いことに、摂取カロリーと食事頻度を両方制限したマウスでは、耐糖能改善に加えて、インスリン感受性の亢進、フレイル評価指標の総合的な改善が確認された。さらに同マウスでは、通常餌を自由摂取したマウスと比較して、約半年間の中間寿命延伸が認められた。その一方でカロリー制限したにもかかわらず、摂取カロリーを制限したのみのマウスでは、寿命が短縮される結果が得られた。
 これらの結果から本論文では、長年支持されてきたカロリー制限の老化に対する抑制的な効果は、カロリー摂取量の減少による関与のみといった定説を覆し、カロリー制限による代謝改善や抗老化作用を最大限に引き出すには、食事頻度の制限を検討し、空腹期間を設ける必要があることが示唆された。今後、カロリー制限と食事頻度の調節がヒトでも同様の効果を示すのか、研究の発展が期待される。
(文責:多田敬典)

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