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編集委員会からのお知らせ:2022年7月号海外文献紹介

Sestrin mediates detection of and adaptation to low-leucine diets in Drosophila.

Xin Gu, et al.
Nature. Online ahead of print. (2022).

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35859173/

 mTORC1は、老化制御において中心的な役割をすることが多くの研究から明らかにされています。必須アミノ酸のひとつであるロイシン(leucine)は、mTORC1の活性化に重要であることが知られています。また、ロイシン結合タンパク質であるSestrinは、アミノ酸センサーとして働き、ロイシンが欠乏するとmTORC1を抑制することが哺乳類細胞を用いたin vitro系で明らかにされていました。しかし、食餌由来のロイシンに対する生体内でのSestrinの役割については不明でした。今回紹介する論文では、ショウジョウバエの遺伝学や生化学的手法を用いて、分子から行動に至るまでSestrinによるロイシンセンシングについて綺麗にアドレスしています。
 まず著者らは、Sestrinがin vivoでもロイシンセンサーとして働き、mTORC1活性を調節することを示しました。次に、Sestrin変異体では、コントロール系統に対してロイシン欠乏食での寿命が短いことから、Sestrinはロイシン欠乏を感知して寿命を調節することが示唆されました。次に、food choice assayの結果、コントロール系統ではロイシンリッチな餌を好み、そちらに多くの卵を産むことがわかりました。一方、Sestrin変異体ではその傾向が失われました。ちなみに、ロイシン欠乏食では幼虫は生存できないようです。最後に、どの組織でのSestrinがこのfood choice行動に必要なのかについて、各組織でSestrinをノックダウンして調べました。その結果、グリア細胞におけるSestrin-mTORC1 axisがロイシンセンシングとその後の産卵行動に必要であることが示唆されました。
 老化におけるSestrinの役割については、昨年頃からショウジョウバエで報告されていますので、生体内におけるロイシンの役割とともに今後も注目していきたいと考えています。
(文責:赤木一考)

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