Powered by Google

  

日本基礎老化学会について

ごあいさつ

下川功理事長

   理事長 下川功

  私が老化研究を始めたのは、1988年の夏の終わりに、アメリカのテキサス大学ヘルスサイエンスセンターサンアントニオ校に留学する機会を得た時です。当時、サンアントニオでは、Masoro教授、Yu教授を中心として、カロリー制限による寿命延長効果を研究するグループが形成されていました。

 私は、ラットの寿命集団の病理学的検索をしつつ、下垂体の形態学的な変化を研究しました。モデル動物として用いられていたF344ラットは、長期飼育すると白血病や下垂体腺腫、腎症や心筋症を発症していました。当時、サンアントニオのグループでは、老化過程を理解するために、疾患の影響を除外することを強く意識していました。Yu先生から「カロリー制限による癌や疾患の抑制が寿命延長にどの程度寄与しているのか」と質問されました。カロリー制限は疾患を抑制しているだけあって、生理学的な老化過程を遅延しているわけではないという批判的な議論もあったのです。統計学的な手法によって、疾患抑制の影響を除外した上でも寿命は延長するという間接的な結果は得られましたが、加齢すると疾患を発症する哺乳類モデルでは、Yu先生の質問に答えるには限界がありました。また、高齢期の疾患の発症基盤に、老化過程が内在すると考えることは妥当であり、疾患の発症と老化の進行を分けて考えることにも無理があると思っていました。

 1988年には、当時、カルフォルニア大学アーバイン校におられたJohnson先生が、単一の遺伝子変異によって線虫が長寿命化することを報告しました。その後、線虫ばかりではなくラットやマウスでも、単一の遺伝子の変異によって寿命が延長することが示されました。寿命延長に関与する共通のシグナル経路はIGF-1系です。このシグナル系が減弱する変化は、様々な動物を長寿命化します。カロリー制限もIGF-1系を抑制します。長寿命化遺伝子とカロリー制限モデルは、動物の老化や寿命制御機構を理解するよい手段となりました。

 私が老化研究を始めた頃は、老化研究を科学としてみとめない研究者もいました。しかしながら、モデル動物の老化過程を詳細に観察した時代から、線虫などの短寿命モデル、遺伝子改変マウスを用いた遺伝学的研究、網羅的遺伝子、タンパク質発現解析から次世代シークエンシングとテクノロジーの進歩を取り入れ、老化や寿命を制御する過程を分子生物学的に解析できるようになりました。現在、老化や寿命は生命科学研究の最も重要な課題の一つです。

 日本基礎老化学会は、1977年に研究会として発足した学術団体です。様々なモデル動物を用いて、ヒトの老化や老化関連疾患の発症、寿命制御機構を明らかにし、健康寿命を延伸する生活習慣やシグナル系に作用する化合物の開発などに興味をもつ研究者が集います。老化研究に興味をもつ学生や若手研究者を健全に育成します。私たちは、基礎研究と臨床への橋渡し研究を主体として、少子高齢化が進む国際社会に貢献をすることを目指しています。

理事長 下川功
2015年6月吉日

設立

昭和56年5月15日(前身の日本基礎老化研究会の設立は昭和52年2月2日)

歴代会長

初代 会長 太田邦夫
第2代会長 今堀和友
第3代会長 鈴木孯之
第4代会長 佐藤昭夫
第5代会長 後藤佐多良
第6代会長 丸山直記
第7代会長 石井直明
現在の会長
(理事長)
  下川功(長崎大学医学部)

主な活動

  • 大会
  • シンポジウム
  • 会誌の発行(年3回)、図書の発行
  • 役員会 理事会(年2回)、評議員会(年1回)

  • 日本基礎老化学会奨励賞(40歳以下)に応募できます。
  • 隔年に開催される日本老年学会の合同会では他の6学会(日本老年医学会、日本老年社会科学会、日本老年歯科学会、日本老年精神医学会、日本ケアマネージメント学会、日本老年看護学会)の会場にも入場できます。
  • 老化総説誌 Biomedical Gerontology(基礎老化研究)が配布されます。